会長挨拶
京都クオリアフォーラム設立に際して
21世紀において日本に住む多くの人々が今、豊かな暮らしを享受しているのは、先人が飽くなき探求心を持って、科学技術や事業の発展への寄与を積み重ねてきた結果であることは明確であり、これに異議を唱える方は多くはないのではないでしょう。一方、現在私達を取り巻く我が国の状況を俯瞰した時、他に先んじる最先端の基礎研究や、そこからの新しいビジネスチャンスの創造、そしてそれらを成し遂げる次世代人財の育成という点で大きな課題があると認識しています。先進他国やアジアの勢いのある国々と比較しても国内の研究成果や新規事業の質、量、スピード、いずれにおいても憂慮すべき状況です。
このままでは日本から新しい技術や事業は起こらなくなるのではないかという大きな危機感を感じています。この状況を何とかしようと、産業界とアカデミアの関係が伝統的に良好な京都において、大学と企業の「知」を調和的に共有する場を、社会課題の解決と新産業の創造を目的として立ち上げようと考えたのです。
折しも同じ京都に在る京都大学 前総長の山極氏と、まさしく同じ危機感を共有できたことから、意を強くして山極氏と私が共同発起人となり、京都ならではの産学連携の枠組みを作ろうと2018年から開始したのが京都クオリア会議でした。ここでは、京都企業の経営トップと大学の学長が集って、忌憚のない意見交換を行っています。
約2年間続いたこの会議は、まさに談論風発、様々なアイデアや提案が飛び交う活発なものになり、このまま終わらせるのはもったいない、イノベーションを起こせるような具体的な活動につなげようと考え、2020年、「京都クオリアフォーラム」として新たな産学連携の場を京都で発足させることにしました。
この団体では、産業界とアカデミアがニーズ・シーズや各種情報を持ち寄ってイノベーションを起こす研究テーマを探索する事業と、企業と大学の研究者の交流を図り人材育成につなげる事業の二つを柱として実行していきます。すでに京都に在る7企業と6大学のトップの賛同を得ておりますが、まだまだ他の京都企業や大学にも門戸を開き、賛同者の増加を目指しています。
また、京都府、京都市もこの趣旨にご賛同され、参加の意を表明されており、行政、アカデミア、産業界が緊密に連携をとることで、必ずや京都に新しいイノベーションを起こす活動に結び付けていきたいと考えています。
京都で生まれ育まれてきた伝統産業は、その発祥においては他に例を見ない先端産業であったはずです。その本来先進的である京都の伝統を今につなげ、世界に先駆けるイノベーション創出を実現していく所存ですので、ご指導、ご鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
京都クオリアフォーラム
会長 堀場 厚
株式会社 堀場製作所
代表取締役会長兼グループCEO